疲れの原因物質は乳酸じゃなかった? 本当の原因物質FFとは? 「疲れ」を回復させる物質もあるの?

疲れの原因物質を取り除くには? 疲れの原因

疲労の原因物質は乳酸じゃなかった?体育の授業などで習ったという方も多いと思いますが、一般的には「乳酸」が「疲れ」の原因物質とされてきました。

ところが近年、本当の「疲れ」の原因物質が、「FF(ファティーグ・ファクター[疲労因子])」と呼ばれるタンパク質の一種であることが分かりました。

つまり、疲れを取るために、また、疲れにくい体をつくるためには、FFをいかにコントロールして抑えていくかが、大事なポイントになります。

「乳酸」は、運動などをして疲れがたまると分泌されることから、「疲れ」の原因物質とされてきました。しかし実際は、むしろ疲労を回復する働きをしていることが確認されています

「疲れ」の原因物質FFはどんな働きをするの?

では、「疲れ」の正体とも言える、その「疲労因子」という名前を持ったタンパク質、FFはどのように発生して、どのような働きをするのでしょうか?

  1. デスクワークや立ち仕事、家事なども含めた「労働」をします
  2. 体を動かしたり、頭を使ったことで細胞が大量の酸素を消費します
  3. 細胞が酸素を消費すると、逆に活性酸素が増えます
  4. 活性酸素が筋肉周辺の細胞を酸化させて傷つけます
  5. 細胞からカリウムや老廃物が出ていきます
  6. 細胞の機能が低下したり、疲労物質であるFFが発生します
  7. 脳にFFが伝わり、疲れやだるさを認識します

活性酸素は老化の要因としても知られているように、DNAをも傷つける恐ろしい存在です。その働きによってFFが発生し、疲れが出てくると考えられています。

しかし逆に考えれば、FFが「疲れ」の信号を脳に送ることで、身体を休ませるタイミングを知ることができるとも言えます。

研究によれば、FFは肉体的な「疲れ」はもちろん、精神的な「疲れ」によっても増えることが分かっています。

「疲れ」を回復させる物質はあるの?

生物の体はうまくできていますので、FFが発生した際には同時に「疲れを取る」ための物質も生まれています。

それが「FR(ファティーグ・リカバー・ファクター[疲労回復因子])」というタンパク質です。

FRは、FFによって傷ついた細胞を治し、疲労を回復してくれるありがたい存在です。これによって通常は、疲労がたまっても少し休めば元気になることができます。

つまり慢性的な疲労を抱えている人というのは、FRが少ないために、FFの影響を強く受けやすいともいえるのです。

疲労回復物質FRを増やすには?

しかし、年齢が進むと誰でも多かれ少なかれ、疲労回復物質であるFRを分泌する働きは悪くなると言われています。

若い頃はFFが発生すると、すぐにFRが出てきて細胞を修復してくれるのですが、加齢とともにFRの反応が悪くなり、FFの作用を止めきれなくなり、いわゆる「疲れやすい」状態になってしまいます

なので、FRが発生しやすい状況、いつどのように発生しているのかを把握することが効果的です。

FRは、通常、FFと同時発生します。つまり、FFが出てくるようなある程度の負荷が体にかかっている状態の方が、FRが発生しやすいのです。

ですから「疲れているから運動しない」のではなく、むしろ「運動することで疲れを取る」ようにしたほうがいいでしょう。

疲れの原因物質を取り除くには?と言っても、ウォーキングスロージョギングなど身体への負担が少なく、無理なく続けられそうなものがオススメです。

それをできるだけ毎日数十分ずつおこなうことでFRの量が増え、疲れが取れ疲れにくい体になっていきます。

ただし、前日の疲れが残った状態ですぐに激しい運動をしてしまうと、FFがますます増加してしまいます。疲れが抜け切れていないと感じる時には運動量を抑えるなどして、うまくバランスをとるようにしましょう。

また運動をして疲れた後は、ゆっくり体を休ませてあげることも大切です。というのも、FRは運動をしている時だけではなく、リラックス時にも増えるからです。

自律神経でいうと、「休息モード」である副交感神経が優位になった時に増えやすいといわれています。

つまり、「動く時はしっかりと動いて、休む時はゆっくりと休む」、なにごともだらだらとせず、メリハリをつけて生活することが、「疲れ」対策には有効だと言うことです。

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疲労回復物質FRのもとになる成分は?

もう1つ、FRの産生に役立つ成分が確認されていますのでご紹介しましょう。それは「イミダゾールジペプチド」というアミノ酸です。

イミダゾールジペプチドには抗酸化作用があるため、活性酸素による細胞の酸化を抑えることができ、疲労回復に役立ちます。実際、疲労回復サプリとしてたくさんの商品に活用されているほどです。

イミダゾールジペプチドは、食べ物でいうなら鶏のムネ肉ササミ、またはマグロカツオといった回遊魚に多く含まれます。牛や豚などより、よく筋肉を使う動物の肉に多いのが特徴です。

渡り鳥が大陸と大陸の間を、何日も飛び続けていられるのは、羽を動かすための胸の筋肉(ムネ肉)にイミダゾールペプチドが多く含まれるためだとも言われています。もちろん、鶏は渡り鳥ではありませんが、同じように豊富に含まれています。

マグロやカツオなどの回遊魚が、長く泳ぎ続けられるのも同じ理由だと言われています。

ある実験では、トリ胸肉を1週間食べる前と食べた後とで同じ運動をおこなったところ、食べた後のほうが明らかに持続時間が長かった(疲れにくかった)という結果が報告されています。

また、トリ胸肉やササミなどは、筋肉を作るために欠かせないタンパク質でもある上、脂肪分が少ないですので、運動をする人にはぴったりの食材です。